子どものレジリエンスとは?家庭で育む「折れない心」7つの習慣

子どものレジリエンスとは?家庭で育む「折れない心」7つの習慣 非認知能力

📘 この記事を読むとわかること

  • レジリエンス(折れない心)の正しい意味と、自己肯定感との違い
  • なぜ今、子どもにレジリエンスが必要とされているのか
  • 家庭でレジリエンスを伸ばすためにできる、年齢別の関わり方
  • 「ほめ方」ひとつで子どもの粘り強さが変わる理由
  • 今日から実践できる、レジリエンスを育てる7つの習慣

レジリエンスとは、困難や逆境に直面したときにうまく適応し、そこから立ち直る心の力のことです。子どものレジリエンスは、結果ではなく過程を認める声かけと、小さな失敗を経験させる家庭環境の中で育ちます。

「うちの子は失敗するとすぐに諦めてしまう」「打たれ弱くて心配」。そう感じている保護者は、決して少数派ではありません。

テストの点数が悪かっただけで一日中落ち込む。発表会の前になると「どうせうまくいかない」と挑戦を避ける。そんな様子を見ると、この先の受験や社会人生活を思って不安になるのも当然でしょう。

けれど、レジリエンスは生まれつきの性格ではありません。日々の関わり方次第で、誰でも伸ばせる力だと研究で分かっています。特別な教室も教材も要りません。必要なのは、家庭での声かけと環境づくりだけです。

この記事では、公的機関の調査データや心理学の研究が示す根拠から、年齢別の育て方、今日から使える具体的な声かけまでを、家庭で実践できる形に整理しました。

レジリエンスとは?なぜ今、子どもに必要なのか

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レジリエンスが今これほど注目される背景には、大きく3つの変化があります。

  • 日本の子どもの自己肯定感が、国際比較で低い水準にあること
  • AIの普及などにより、将来必要とされるスキルが読みにくくなっていること
  • SNSの普及で、子どもが他人と自分を比べる機会が急増していること

教育心理学では、レジリエンスは「困難や逆境に直面したときにうまく適応し、そこから立ち直る心の力」と定義されます。逆境そのものをなくす力ではありません。逆境の後にどう回復するかを表す言葉である点が、この概念の核心です。

では、日本の子どもたちの現在地はどこにあるのでしょうか。

こども家庭庁が2023年11〜12月に、日本・アメリカ・ドイツ・フランス・スウェーデンの13〜29歳を対象に実施した調査があります。結果は次のとおりです。

  • 「今の自分が好きだ」と答えた日本の子ども・若者は53.4%(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計)
  • 「自分に満足している」という項目でも、日本は57.4%にとどまる

出典:こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」(令和5年度)

この差は、能力そのものの差ではありません。うまくいかない経験をしたときに「それでも自分には価値がある」と思い直せるかどうか。つまり、レジリエンスの強さの差だと考えられています。

同じ失敗をしても、立ち直れる子とそうでない子がいる。その分かれ目は能力ではなく、失敗の受け止め方を学んできたかどうかにあります。

加えて、子どもたちが大人になる頃の社会は、今と大きく変わります。今ある職業の内容も、求められるスキルも、10年後には様変わりしている可能性があります。正解が一つに決まらない時代だからこそ、失敗しても立ち直り、次に挑戦できる力の価値が増しているのです。

逆境の中身も変わりました。以前は成績や受験が主な悩み。今はSNSを通じて同世代と自分を比べる機会が格段に増えています。友達の投稿を見て「自分だけうまくいっていない」と感じる場面は、学校の外でも起こります。

目に見えにくい比較のストレスにさらされる時間が長い分、落ち込みから立ち直る力の重要性は、以前より確実に増しています。

📝 補足

「自己肯定感」との違いが気になる方もいるでしょう。自己肯定感は「ありのままの自分を肯定する感覚」、レジリエンスは「困難から立ち直る力」を指します。レジリエンスが育つと、失敗しても自己肯定感が大きく崩れにくくなるという関係にあります。

家庭でレジリエンスは伸ばせる?研究が示す3つの要因

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結論から言えば、伸ばせます。レジリエンスは生まれつきの気質ではなく、家庭や周囲との関わりを通じて後天的に育つ力です。心理学の研究では、それを支える要因が3つに整理されています。

要因具体的な内容
I HAVE(環境要因)信頼できる人間関係、頼れる大人の存在、安定した家庭環境
I AM(個人内要因)自分は愛される存在だという感覚、自己肯定感、責任感
I CAN(獲得される力)問題解決力、感情のコントロール、人に助けを求める力

この3つは、それぞれ育て方が違います。

  • I HAVE(環境要因)|子ども一人では作れない土台です。「困ったときはこの人に相談すればいい」と思える大人が家庭に一人でもいるかどうかで、逆境への向き合い方は大きく変わります。寝る前の5分間だけでも構いません。
  • I AM(個人内要因)|子ども自身の内側にある感覚です。「自分は大切にされている」「得意なことがある」という実感の積み重ねで育ちます。逆に、結果でしか評価されない環境が続くと育ちにくくなります。
  • I CAN(獲得される力)|練習で身につくスキルです。問題を分解して考える、感情が高ぶったら一呼吸置く、一人で抱え込まず助けを求める。大人が手本を見せ、一緒に練習することで少しずつ伸びます。

研究データも、この方向性を裏づけています。

ベネッセ教育総合研究所は、日本を含むアジア8か国の5歳児の母親を対象にした「子どもの生活に関するアジア8か国調査2021」の分析結果を紹介しています。その研究コラムでは、子ども本人のレジリエンスが「設定した他のどの予測変数よりも、子どものウェルビーイングを正の方向で強く予測する」と報告されました。

出典:ベネッセ教育総合研究所「子どものウェルビーイングに重要なレジリエンスを育むために」

同じ調査では、母親の応答的な養育態度や子育て肯定感、遊べる友達の数なども関連要因として挙がっています。特別なプログラムより、日常の関わりの質が土台になるということです。

年収や学歴といった家庭の条件よりも、日々のやり取りの積み重ねが効く——多くの保護者にとって、これは希望の持てる結果ではないでしょうか。

そして3つの要因は、独立して存在しているわけではありません。日常の中で重なり合っています。

例えば、子どもが失敗を報告してきた場面。まず話を最後まで聞き(I HAVE)、「話してくれてありがとう」と受け止め(I AM)、「次はどうする?」と一緒に考える(I CAN)。この一連の流れは、ひとつの会話の中で3つすべてに働きかけています。

新しい時間をつくらなくてもいい。日々の会話の質を少し変えるだけで実践できます。

💡 ポイント

レジリエンスは「強い子・弱い子」で分かれる、生まれつきの性格ではありません。安定した人間関係と、小さな成功体験の積み重ねが土台になります。

何歳から始める?年齢別・レジリエンスの育て方

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関わり方は、子どもの発達段階によって変わります。早い時期から一貫した関わりを続けるほど、土台は安定しやすくなります。

年齢関わり方のポイント
未就学児(0〜6歳)泣く・怒るなどの感情を否定せず、まず受け止める。安心できる大人の存在を繰り返し示す
小学生(7〜12歳)結果より過程をほめる「努力ほめ」を意識する。小さな失敗を挽回する経験を奪わない
中学生(13〜15歳)友人関係や部活動の悩みに口を出しすぎず、本人の対処を見守る。相談されたら否定せず聞く
高校生(16〜18歳)進路選択など重要な決断は本人に委ね、失敗しても再挑戦できる環境を家庭で用意する

未就学児・小学生の時期にできること

未就学児の時期に大切なのは、感情をそのまま受け止めることです。

「泣くのをやめなさい」ではなく、「悲しかったね」と気持ちに言葉を添える。それだけで、子どもは「自分の感情は認められる」と学びます。この積み重ねが、後に自分の感情を自分でコントロールする力につながります。

小学生になると、テストや習い事、友達とのトラブルなど「うまくいかない」経験が一気に増えます。ここで気をつけたいのが、親の先回りです。

  • 失敗しそうな場面を、事前に取り除いてしまう
  • 子どもの代わりに、親が解決してしまう

どちらも善意からの行動ですが、子どもは立ち直る経験そのものを積めなくなります。転んでもすぐに手を貸さず、少しの間見守る。本人が起き上がる過程に付き合うことが力を育てます。

中学生・高校生の時期にできること

中学生になると、友人関係や部活動の悩みが複雑になり、親に詳しく話さなくなる子も増えます。この時期に必要なのは、直接介入ではなく余白です。

相談されたときは、「それでどうするつもり?」と本人の考えを先に聞く。この姿勢が、自分で立ち直る練習になります。

高校生になると、進路選択という大きな決断が控えています。志望校への不合格、部活動での挫折。これまでより重い失敗に直面する場面も増えるでしょう。

ここで親が代わりに道を決めてしまえば、失敗から立ち直る機会そのものを奪うことになります。本人が選び、失敗しても再挑戦できる環境を家庭で用意する。それがこの時期の親の役割です。

「何をどう声かけすればいいか分からない」。そう感じたら、まず具体的な行動を1つだけ変えてみてください。例えば「結果を聞く前に、まず今日の様子を聞く」。これだけでも、子どもは「結果だけを見られている」という感覚から解放されます。

🧭 あわせて使えるツール

年齢だけでなく、子ども一人ひとりのタイプに合わせた関わり方を知りたい方は、無料の「子育てスタイル16タイプ診断」も参考になります。レジリエンスを育てる声かけも、タイプによって響き方が変わります。

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「ほめ方」で変わる?能力ほめと努力ほめの違い

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ほめ方を「能力」から「努力」に変えるだけで、子どもの粘り強さは大きく変わります。

根拠のひとつが、心理学者のクラウディア・ミューラーとキャロル・デュエックが1998年に発表した実験です。128人の小学5年生を対象に、課題の成功後のほめ方を2つのグループに分けて比較しました。

  • 「頭がいいね」と能力をほめたグループ|失敗した後の粘り強さが低下し、難しい課題への挑戦を避ける傾向が強まった
  • 「よく頑張ったね」と努力をほめたグループ|失敗後も粘り強く取り組み、難しい課題を選ぶ割合が高くなった

能力をほめられた子どもほど「自分の能力を証明し続けなければいけない」というプレッシャーを感じ、失敗を避けるようになったと考えられています。

出典:Mueller, C. M., & Dweck, C. S.「Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance」(Journal of Personality and Social Psychology, 1998)

この違いは、能力を「生まれつき固定されたもの」と捉えるか、「努力次第で伸びるもの」と捉えるかという考え方にもつながっています。日々の何気ない一言が、その土台を少しずつ形づくっているのです。

日常の声かけに置き換えると、違いはさらにはっきりします。

場面能力ほめ(避けたい例)努力ほめ(意識したい例)
テストで良い点を取った「頭がいいね」「才能があるね」「毎日コツコツ復習したもんね」
発表がうまくいった「さすが、センスあるね」「何度も練習した成果が出たね」
失敗して落ち込んでいる「あなたならできるはずでしょ」「ここまで頑張った過程は無駄じゃないよ」

筆者は高校でキャリア教育の授業を外部講師として毎年担当していますが、同じような場面に何度も出会います。

プレゼンテーションがうまくいかなかった生徒に「発想は面白かった、伝え方をどう変える?」と過程に触れて聞くと、多くの生徒が次の挑戦に前向きになります。逆に結果だけを評価すると、失敗した生徒ほど次の発言を避けるようになる。教室という限られた時間の中でも、声のかけ方ひとつで表情と次の行動が変わる場面を、何度も見てきました。

⚠️ 注意

「すごいね」「天才だね」という能力ほめ自体が悪いわけではありません。ただし失敗した直後だけは、結果ではなく取り組んだ過程に触れる声かけを意識してみてください。

レジリエンスを育てる家庭の習慣とは?今日からできる7つの関わり方

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ここまでの研究知見を踏まえると、家庭で実践できる習慣は次の7つに整理できます。特別な準備は要りません。今日の会話から始められます。

  1. 結果より過程をほめる。「今日はどこを頑張った?」と聞いてみる
  2. 失敗を先回りして防がない。小さな失敗は挽回する経験に変える
  3. 気持ちを否定せず、「悲しかったね」「悔しかったね」と言葉にして受け止める
  4. 「自分で決めた」経験を増やす。小さな選択から任せてみる
  5. 家庭内で困りごとをオープンに話す。完璧な親を演じない
  6. 友達の数より「安心して話せる相手が一人いるか」を大切にする
  7. できたことを記録する。小さな達成を振り返る習慣をつくる

1〜3は感情面での関わり、4〜5は自分で決める経験、6〜7は日々の振り返り。すべてを一度に始める必要はありません。まずは1つだけ、今日の夕食の会話に取り入れてみてください。

中でも「実践が難しい」と感じる保護者が多いのが、次の3つです。

  • 失敗を先回りして防がない|忘れ物をしそうなときについ持たせてしまう。宿題が終わらなそうなときに手伝ってしまう。こうした場面で一度立ち止まり、「今日は忘れ物をしても、次にどうすればいいか自分で考える機会にしよう」と捉え直すだけで、子どもが挽回を経験する回数は増えていきます。
  • 家庭内で困りごとをオープンに話す|親自身が「今日はこんな失敗をしたけど、こう対応した」と話すと、子どもは「大人でも失敗する」「失敗した後にどう動けばいいか」を具体的なモデルとして学べます。完璧な親を演じるより、回復する姿を見せるほうが効果的です。
  • できたことを記録する|カレンダーやノートの隅に「今日できたこと」を一行書くだけ。「苦手な問題に最後まで取り組めた」「初めての人に挨拶できた」——テストの点数のような大きな成果でなくて構いません。子ども自身が「少しずつ前に進んでいる」と実感できるようになります。

7つに共通するのは、「失敗をなくす」のではなく「失敗しても大丈夫だと思える関係」をつくること。今日、一つだけ会話の中で試してみることから始めてみてください。

よくある質問

レジリエンスと自己肯定感はどう違いますか?

レジリエンスは困難から立ち直る力、自己肯定感はありのままの自分を認める感覚です。レジリエンスが育つと、失敗しても自己肯定感が大きく崩れにくくなるという関係にあります。

レジリエンスが低いとどのような様子が見られますか?

小さな失敗でひどく落ち込む、新しいことへの挑戦を避ける、うまくいかないとすぐに諦める、といった様子が見られることがあります。ただし一時的な落ち込みは誰にでもあるため、繰り返しの傾向として捉えることが大切です。

甘やかすこととレジリエンスを育てることは矛盾しませんか?

矛盾しません。レジリエンスを育てる関わりは、失敗を取り除くことではなく、失敗した後に立ち直る過程に付き合うことです。何でも先回りして解決する関わりとは異なります。

何歳からレジリエンスを意識した関わりを始めればいいですか?

何歳からでも始められます。未就学児の時期から気持ちを受け止める関わりを積み重ねると、その後の土台が安定しやすくなります。

学校でもレジリエンス教育は行われていますか?

一部の学校では、道徳の授業や生徒指導の中でレジリエンスを扱う取り組みが始まっています。ただし体系的な必修科目としてはまだ広がっておらず、家庭での関わりが引き続き重要な役割を持ちます。

まとめ

  • レジリエンスとは、困難や逆境から立ち直る心の力のこと
  • 生まれつきの性格ではなく、家庭の関わり方次第で誰でも伸ばせる
  • こども家庭庁の調査では、日本の子どもの自己肯定感は他国より低い傾向にある
  • 「結果」より「過程」をほめる関わりが、粘り強さを育てる土台になる
  • 年齢に応じた関わりを積み重ねることが、家庭でできる最も確実な方法

今日の会話で、子どもが何かに取り組んだときに「どこを頑張った?」と一言添えてみてください。小さな声かけの積み重ねが、子どものレジリエンスを育てる第一歩になります。


小牧健也

監修

小牧健也(Investure編集長)

KDDIでの新規事業開発、BtoBマーケティングのコンサルティングを経て、現在はAI関連のベンチャー企業でマーケティングと新規事業開発を担当。高校でキャリア教育の授業も毎年担当し、教育現場で生徒と向き合い続けている。

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