NEXT GIGA(ネクストギガ)という言葉を、ニュースや学校のお便りで目にした方もいるのではないでしょうか。
「GIGAスクール構想」で1人1台配られたタブレットやパソコン。そのおかげで授業にICTが使われるようになった一方で、端末の故障やバッテリー劣化、学校ごとの活用格差など、さまざまな課題が見えてきました。
NEXT GIGAは、こうした課題を解決しながら、子どもたちの学びをさらにアップデートするための取り組みです。
NEXT GIGAの全体像や、お子さんの学校生活にどんな変化があるのかを知りたい方に向けて書きました。端末がいつ新しくなるのか、生成AIはどう使われるのか、保護者として押さえておきたいポイントまで、ひととおり扱っています。
NEXT GIGAとは?GIGAスクール構想の「第2期」にあたる取り組み

NEXT GIGAとは、文部科学省が推進している「GIGAスクール構想」の第2期にあたるフェーズのことです。「GIGA第2期」「セカンドGIGA」と呼ばれることもあります。
ここで押さえておきたいのは、NEXT GIGAは文部科学省が正式に定めた名称ではないという点です。教育業界で広く使われている通称であり、GIGAスクール構想の初期フェーズと区別するために使われています。
もともとのGIGAスクール構想(第1期)は、「1人1台端末」と「高速ネットワーク」というハードウェアの整備がゴールでした。たとえるなら、「全員にノートと鉛筆を配った」段階です。
NEXT GIGAはその先、つまり「配ったノートと鉛筆をどう使いこなすか」に重点を移したフェーズだといえます。古くなった端末を新しくするだけでなく、ICTを使った教育の質そのものを底上げしようという取り組みです。
出典:文部科学省「GIGAスクール構想の実現について」
GIGAスクール構想のGIGAは「Global and Innovation Gateway for All」の略です。「すべての子どもたちに、学びの革新への入り口を届ける」という意味が込められています。
GIGAスクール構想の振り返り|第1期では何が変わったのか

NEXT GIGAを理解するうえで、まず第1期の成果と課題を押さえておく必要があります。
第1期の目標と成果
GIGAスクール構想は2019年に発表されました。当初は2023年度までの5年計画でしたが、コロナ禍でオンライン授業の必要性が高まり、前倒しで2021年度には本格スタートしています。
第1期の2本柱は次のとおりです。
- 児童生徒1人1台の学習用端末の配備
- 校内の高速大容量ネットワークの整備
その結果、義務教育段階では2022年度末時点で99.9%の自治体が1人1台端末の整備を完了させました。教育用コンピュータ1台あたりの児童生徒数は、2020年3月時点の4.9人から0.9人にまで改善しています。
出典:文部科学省「令和4年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」2023年10月
「配って終わり」にはならなかった
端末の配備はほぼ完了しましたが、「実際にどれだけ活用されているか」には大きな差が出ています。
文部科学省の調査では、教員と児童生徒のやりとりに「ほぼ毎日端末を利用した」と答えた小学生は全体の29.5%、中学生は25.7%にとどまりました。端末を文房具のように毎日使う環境にはまだ到達していない学校が多かったのです。
つまり、「全員に道具は渡したけれど、使いこなすところまでは追いつかなかった」というのが第1期の率直な現状でした。
NEXT GIGAが必要な理由|第1期で見えてきた4つの課題

第1期を経て、教育現場では主に4つの課題が浮き彫りになっています。
課題1:端末の故障とバッテリー劣化
GIGAスクール構想で導入された端末は、2019年頃から順次配備されたものです。バッテリーの耐用年数は一般的に4〜5年とされており、2024年度には多くの端末が更新時期を迎えています。
キーボードの破損やバッテリー劣化が報告されており、たとえば長野県川上村では、導入から5年経過した端末の約3割にキーボード故障が確認されたと報告されています。
課題2:自治体ごとの活用格差
端末の利活用状況には自治体間で大きな差があります。
「児童生徒のICT活用を指導する能力」が98.2%の自治体がある一方で、76.9%にとどまる自治体もあることが文部科学省の調査で示されています。ICT支援員の配置状況や研修体制の差が、そのまま子どもたちの学習環境の格差になっています。
課題3:ネットワークの遅延と不具合
端末があっても、通信が遅ければ使いものになりません。文部科学省が推奨するネットワーク帯域を満たしている学校は約2割にとどまるとの指摘もあります。
デジタル教科書やクラウド教材を使おうとしたときに画面が固まる、読み込みに時間がかかる、といったトラブルは多くの学校で起きています。
課題4:教員の業務負担と校務DXの遅れ
文部科学省の調査によると、教師の1日の平均在校時間は10時間前後です。端末の導入で新たにトラブル対応や教材準備の業務が加わり、ICT活用のための研修時間を確保することすら難しい状況にあります。
紙ベースの校務が残っている学校も多く、ICTの恩恵を教員自身が実感しにくいことも、活用が進まない一因となっています。
NEXT GIGAで変わる4つのポイント

NEXT GIGAでは、上記の課題を解決するために4つの柱が設定されています。
ポイント1:1人1台端末の計画的な更新
NEXT GIGAの期間は2024年度から2028年度までの5年間です。この間に、第1期で配備した端末を計画的に更新します。
文部科学省は「1人1台学習端末の更新補助事業」として、端末1台あたり55,000円の補助を設定しました。公立学校の場合、補助率は費用の3分の2です。予備機(児童生徒数の15%以内)の整備費用も補助の対象に含まれています。
出典:文部科学省「総合経済対策及び令和5年度補正予算(GIGAスクール構想関係)について」
第2期では、都道府県単位での共同調達が原則となりました。小規模な自治体が単独で端末を調達する負担を減らすためです。
ポイント2:ネットワーク環境の改善
文部科学省は「ネットワークアセスメント実施促進事業」を進めています。これは、専門の技術者が学校のネットワーク環境を診断して、改善点を洗い出す取り組みです。
アセスメントにかかる費用の一部(補助対象事業費の上限100万円/校、補助率1/2)を国が補助する仕組みも整えられています。2026年度には80%以上の自治体がアセスメントを実施済みまたは実施予定となる見込みです。
ポイント3:校務DXの推進
成績管理や出欠管理などの校務システムをクラウド化・統合し、教員の事務作業を効率化する動きが加速しています。
ペーパーレス化が進めば、教員がICTを学ぶ時間や、子どもと向き合う時間を確保しやすくなるでしょう。文部科学省は段階的な研修プログラムの提供や、GIGAスクール運営支援センターの機能強化も打ち出しています。
ポイント4:先端技術・生成AIの教育活用
NEXT GIGAの時代に注目されているのが、生成AIの教育利用です。
文部科学省は「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」を公表しており、教育現場での活用方法と留意点を示しています。
たとえば、英語の会話練習でAIを相手にスピーキングの練習をする、調べ学習でアイデアを整理するためにAIに質問するといった活用が始まっています。あくまでAIが「答えを出す」のではなく、子ども自身が「考えるためのきっかけ」として使うことがポイントです。
出典:文部科学省「学校現場における生成AIの利用について」
NEXT GIGAのスケジュールと予算

NEXT GIGAの流れを、時系列で押さえておきます。
| 年度 | 主な動き |
|---|---|
| 2023年度 | 補正予算で端末更新のための基金(約2,643億円)が造成。補助額が1台45,000円から55,000円に引き上げ |
| 2024年度 | NEXT GIGAが正式スタート。早期導入自治体から端末更新が開始 |
| 2025年度 | 端末更新のピーク。全体の約72%の調達が集中する見込み。Windows 10の延長サポート終了(2025年10月) |
| 2026年度 | 多くの自治体で端末更新が完了。次世代校務DXの本格導入、次期学習指導要領改訂に向けた議論の集約 |
| 2027〜2028年度 | 残りの自治体での端末更新完了。ICT活用の定着と効果検証 |
2026年度は「ハードの刷新」「校務システムの変革」「教育内容の見直し」が重なる転換点として、教育業界では特に注目されています。
NEXT GIGAで中高生の学びはどう変わるのか

ここからは、NEXT GIGAによって中高生の学校生活が具体的にどう変わるのかに焦点を当てます。
端末が新しくなり、できることが増える
第1期の端末はスペックが限られていたため、動画編集やプログラミングなど負荷の高い作業には不向きなケースもありました。新しい端末は最低スペック基準が引き上げられており、より幅広い学習活動に対応できるようになります。
たとえば、高校の「情報I」で本格的なプログラミングに取り組んだり、探究学習でデータ分析ツールを使ったりする場面で、端末のスペック不足に悩まされることが少なくなります。
個別最適な学びが進む
NEXT GIGAがめざす「個別最適な学び」とは、一人ひとりの理解度や得意・苦手に合わせて学習内容を調整することです。
文部科学省が提供するCBTシステム「MEXCBT(メクビット)」では、オンラインで学力テストや練習問題に取り組めます。学習データが蓄積されることで、自分がどこでつまずいているかが見えやすくなり、先生からのフィードバックもより的確になります。
協働的な学びが広がる
クラウド上で同時にドキュメントを編集したり、プレゼン資料を共同作成したりする「協働的な学び」も、ネットワーク環境の改善で取り組みやすくなります。
人前で発言するのが苦手な生徒でも、チャット機能やコメント機能を使えば自分の意見を出しやすくなるのは、ICTならではの利点です。
「使わされる」から「使いこなす」へ
第1期ではとりあえず端末を配り、教員もどう使えばいいか模索していた段階でした。NEXT GIGAでは、端末を文房具のように日常的に使うことが当たり前になることがめざされています。
ノートをとる、調べものをする、レポートを書く、グループで議論する。こうした学習の基本動作にICTが溶け込んでいく時代が、すぐそこまで来ています。
保護者が知っておきたいNEXT GIGAのポイント

NEXT GIGAは教育委員会や学校の取り組みですが、保護者として知っておくとよいポイントがあります。
家庭のWi-Fi環境を確認しておく
端末の持ち帰り学習が広がると、家庭のインターネット環境が学習環境の一部になります。Wi-Fi環境がない場合でも、多くの自治体ではモバイルWi-Fiルーターの貸し出しを行っています。学校やお住まいの自治体に確認してみてください。
端末の扱い方を家庭でもサポートする
端末は学校からの貸与品です。破損や紛失を防ぐため、家庭での保管場所や扱い方について、お子さんと話しておくとよいでしょう。端末カバーの取り付けや、使い終わったらバッグにしまう習慣をつけておくだけでも、トラブルは減ります。
情報モラルについて親子で話す機会をつくる
ICTの活用が進むと、SNSでのトラブルや不適切なサイトへのアクセスといったリスクも増えます。学校でも情報モラル教育は行われていますが、家庭でのルールづくりも欠かせません。
「何時まで使っていいか」「どんなサイトは見てはいけないか」といったルールを、お子さんと一緒に決めるプロセス自体が、情報リテラシーを育てる学びになります。
「デジタル」と「アナログ」のバランス
端末が新しくなっても、読書やノートへの手書き、実験や体験活動といった「アナログ」の学びの価値が失われるわけではありません。デジタルの便利さを活用しつつ、手を動かして考える時間も大切にする。そのバランスをとるのは、保護者の関わりが大きく影響する部分です。
NEXT GIGAに関するよくある質問
NEXT GIGAはいつからいつまでの取り組みですか?
2024年度から2028年度までの5年間が計画期間とされています。端末の更新は2025年度にピークを迎え、多くの自治体で順次進められています。
端末の費用は保護者が負担するのですか?
公立学校の場合、端末の更新費用は国と自治体が負担します。1台あたり55,000円を国が補助し、残りは自治体の予算で対応する仕組みです。保護者の直接的な費用負担は、原則としてありません。ただし、通信費やアクセサリー(端末カバーなど)は家庭負担となるケースがあります。
GIGAスクール構想とNEXT GIGAの違いは何ですか?
GIGAスクール構想の第1期は「端末とネットワークの整備」が中心でした。NEXT GIGA(第2期)は、整備した環境を「どう活用するか」「どう持続させるか」に重点を移しています。古くなった端末の更新、活用格差の解消、校務DX、生成AI活用などが主なテーマです。
高校もNEXT GIGAの対象に含まれますか?
第1期では小中学校が中心でしたが、高等学校でもICT環境の整備は進められています。2024年度中には全自治体が端末配備を完了する見込みです。NEXT GIGAの端末更新についても高校は対象に含まれていますが、補助の仕組みは自治体によって異なる場合があります。
生成AIは学校でどのように使われるのですか?
文部科学省は「生成AIの利活用に関するガイドライン」を公表しています。調べ学習でのアイデア整理や、英語のスピーキング練習、プログラミングの補助など、子ども自身の思考を深めるための「対話ツール」として活用されるのが基本的な方向性です。AIに答えをそのまま出してもらうのではなく、考えるプロセスを支援する使い方が想定されています。
NEXT GIGAは、端末を配って終わりだった第1期から、「子どもたちが実際にICTを使いこなして学ぶ」段階への移行です。端末が新しくなること自体はゴールではなく、その先に一人ひとりに合った学びの環境が整っていくことが本当の目的です。
お子さんが使っている端末がいつ更新されるかは、学校や自治体からの案内を確認してみてください。端末の変化をきっかけに、「ICTを使ってどんなことができるようになるのか」を親子で話してみるのもよいかもしれません。
Investureでは、ICT教育やAI活用、探究学習など、これからの時代に中高生が身につけたい力をテーマにした記事を配信しています。お子さんの学びのヒントとして、あわせて読んでみてください。
監修:小牧健也(Investure編集長)


