アサーションとは?相手も自分も大切にする伝え方とトレーニング方法

この記事を読むとわかること

  • アサーションの意味と、「自己主張」との違い
  • 自己主張の3つのタイプ(アグレッシブ・非主張的・アサーティブ)
  • DESC法やIメッセージなど、アサーショントレーニングの具体的なやり方
  • 友達関係や部活動など、学校生活の場面別の伝え方
  • アサーションを身につけると、人間関係やこれからの生き方がどう変わるか

アサーションとは、相手の気持ちも尊重しながら、自分の意見や気持ちをきちんと伝えるコミュニケーションの方法です。我慢して黙り込むのでも、感情的に強く言い返すのでもなく、「どちらも大切にする」伝え方を指します。

友達に頼まれごとを断れなくて、あとから「言えばよかった」とモヤモヤした経験はありませんか。部活のグループで意見が違うのに、空気を読んで黙ってしまったこともあるかもしれません。アサーションは、そんな場面で自分を守りながら相手とも良い関係を続けるための、練習して身につけられるスキルです。

この記事では、アサーションの意味から、今日から使える具体的な練習方法、学校生活の場面別の伝え方までをまとめました。読み終わるころには、「言いたいことを言えない自分」から一歩前に進むためのヒントが見つかるはずです。


アサーションとは?相手も自分も大切にする伝え方

アサーションとは何かの図解

アサーションとは、自分の意見や気持ちを、相手の立場も尊重しながら率直に伝えるコミュニケーションの方法です。

英語の「assertion(主張)」が語源ですが、単に「主張する」だけの意味ではありません。心理学の分野では、1949年にアメリカの心理学者アンドリュー・ソルターが行動療法の中で提唱した考え方が起源とされ、1960年代のアメリカで公民権運動や女性の権利運動が広がる中、「誰もが自分の考えを表現してよい」という価値観とともに社会に浸透していきました。

「自己主張」という言葉と混同されがちですが、両者には違いがあります。自己主張は、自分の意見を通そうとすること全般を指す言葉です。一方でアサーションには、「相手の意見や気持ちも同じくらい大切にする」という条件が加わります。自分の言い分だけを押し通すことも、逆に相手に合わせて自分を消してしまうことも、アサーションとは呼びません。

つまりアサーションは、「自分」と「相手」のどちらか一方を選ぶのではなく、両方を大事にする第三の道といえます。


なぜ今、中高生にアサーションが必要なの?

アサーションが必要とされる背景には、中高生を取り巻く人間関係の変化があります。

友達とのやり取りの多くがSNSやチャットで行われる今、直接顔を合わせて気持ちを伝える機会は昔より減っています。文字だけのやり取りでは、ちょっとした一言が誤解を生みやすく、言いたいことを飲み込んでしまう人も少なくありません。

学校現場でも、対人関係のトラブルを未然に防ぐ取り組みとして、アサーション・トレーニングを授業に取り入れる研究や実践が進められています。文部科学省の生徒指導提要でも、児童生徒が自分の気持ちを適切に表現し、他者と良好な関係を築く力を育てることが、学校生活での課題を防ぐ観点のひとつとして位置づけられています。

出典:文部科学省「生徒指導提要」2022年12月

進路選択の面談や、初めて会う人とのグループワークなど、これから先も「自分の考えを伝える場面」は増えていきます。今のうちにアサーションの考え方を知っておくことは、学校生活だけでなく、将来にもつながる備えになります。


自己主張の3タイプ|アグレッシブ・非主張的・アサーティブの違い

自己主張の3タイプの図解

自己表現のしかたは、大きく3つのタイプに分けられます。自分がどのタイプに近いかを知ることが、アサーションを身につける第一歩です。

タイプ特徴具体的な言動の例
アグレッシブ(攻撃型)自分の意見を通すことを優先し、相手の気持ちへの配慮が後回しになる「それは違う」と強い口調で否定する、相手の話を最後まで聞かない
ノン・アサーティブ(非主張型)相手を優先し、自分の気持ちや意見を我慢してしまう頼まれごとを断れない、言いたいことがあっても黙ってしまう
アサーティブ(アサーション型)自分の気持ちも相手の気持ちも大切にしながら、率直に伝える「わたしはこう思う。あなたの意見も聞きたい」と対等に伝える

出典:日本の人事部「アサーションとは――意味と必要とされる背景をわかりやすく

3つのタイプに優劣はなく、誰でも状況によってどのタイプにも寄りやすい面を持っています。大切なのは「自分は非主張型に偏りやすいな」「ここぞというときにアグレッシブになってしまうな」と、自分の傾向をまず自覚することです。自覚できれば、アサーティブな伝え方を意識して練習する余地が生まれます。


アサーショントレーニングとは?今日からできる4つの方法

アサーショントレーニングの4つの方法の図解

アサーショントレーニングとは、アサーティブな伝え方を練習によって身につけていく取り組みのことです。特別な才能ではなく、繰り返し練習することで誰でも上達できるスキルです。

DESC法で気持ちを整理して伝える

DESC法は、伝えたい内容を4つのステップに分けて整理する方法です。D(Describe・描写)で状況を客観的に説明し、E(Express・表現)で自分の気持ちを伝え、S(Specify・提案)で望む行動を提案し、C(Choose・選択)で相手の反応に応じた次の一手を考えます。

たとえば、グループ発表の準備を1人で抱え込んでいるとき、「みんな忙しいのはわかってる(描写)。でも1人だと間に合わなくて不安(表現)。資料作りだけでも手伝ってもらえると助かる(提案)。難しければ他の分担方法も一緒に考えたい(選択)」のように整理すると、感情的にならずに伝えられます。

「わたしは」から始めるIメッセージ

Iメッセージとは、「あなたが〜だ」ではなく「わたしは〜と感じる」という主語で気持ちを伝える話し方です。「あなたのせいで困った」ではなく「わたしは予定が変わって困った」と言い換えるだけで、相手を責める響きが弱まり、受け止めてもらいやすくなります。

主語を「わたし」にすることは、相手を否定せずに自分の感情を伝えるための、シンプルで効果の高い工夫です。

ロールプレイで実践練習する

ロールプレイとは、実際にありそうな場面を想定して、会話のやり取りを声に出して練習する方法です。友達や家族に協力してもらい、「断りたいのに言えない場面」を再現してもらうと、頭の中で考えるだけよりも実践的な感覚がつかめます。

うまく言えなかった部分を一緒に振り返り、別の言い方を試してみることで、少しずつ自分の言葉として定着していきます。

アサーション権を知っておく

アサーション権とは、「誰もが自分の考えや気持ちを表現してよい」という、人が本来持っている権利のことです。「断ってもいい」「間違えてもいい」「わからないと言ってもいい」といった考え方が含まれます。

「こんなことを言ったら嫌われるかもしれない」という不安は誰にでもありますが、アサーション権を知っておくと、自分の気持ちを伝えることへのハードルが少し下がります。


学校生活でアサーションはどう使う?場面別の伝え方

学校生活の場面別アサーション活用の図解

アサーションは、友達関係や部活動、家族とのやり取りなど、学校生活のさまざまな場面で活かせます。中高生の日常でよくある3つの場面をもとに、具体的な伝え方を見てみましょう。

友達の誘いを断りたいとき

テスト前なのに遊びに誘われて断れない、というのはよくある悩みです。「行きたくない」とだけ言うと、素っ気なく聞こえて関係がぎくしゃくしてしまうかもしれません。「テスト前だから今回は難しいけど、終わったら絶対行きたい」のように、断る理由と代わりの提案をセットで伝えると、関係を保ちながら気持ちを伝えられます。誘ってくれたこと自体への感謝を一言添えるだけでも、伝わり方はやわらかくなります。

部活やグループワークで意見が違うとき

自分の意見が周りと違うとき、「空気を読んで合わせる」のではなく、「わたしはこう思うけど、みんなはどう思う?」と、自分の意見を出したうえで相手の意見も尋ねる形にすると、対立ではなく話し合いになりやすくなります。多数派の意見に流されそうになったときこそ、一度立ち止まって自分の考えを言葉にしてみる価値があります。反論するためではなく、より良い結論を一緒に探すための発言だと捉えると、言い出しやすくなるはずです。

家族に自分の気持ちを伝えたいとき

進路や勉強のことで、親と意見が食い違うこともあるでしょう。感情的に反発するのではなく、「わたしはこう考えている。理由は〜だから」と、Iメッセージを使って考えの背景まで伝えると、頭ごなしの反発よりも話を聞いてもらいやすくなります。一度で分かってもらえなくても、繰り返し自分の言葉で伝え続けることに意味があります。もし家庭内でうまく気持ちを伝えられずに悩んでいる場合は、子どものSOSをAIが受け止める時代|相談できない子どもへの親のアプローチという記事もあります。保護者にすすめてみるのもひとつの方法です。


アサーションを身につけると何が変わる?

アサーションを身につけた変化の図解

アサーションを練習すると、まず人間関係のストレスが減りやすくなります。言いたいことを飲み込んで後悔する回数が減り、自分の気持ちに正直でいられる時間が増えるからです。

また、相手の意見も否定せずに受け止める姿勢が身につくため、意見が違う相手ともフラットに話し合える関係を築きやすくなります。これは友達関係だけでなく、将来のキャリア教育で重視される「他者と協働する力」にも直結するスキルです。社会に出れば、価値観の違う相手と一緒に仕事を進める場面が数多くあります。

アサーションは一度身につけたら終わりというものではなく、場面ごとに少しずつ練習を重ねていくスキルです。うまくいかない日があっても、それは失敗ではなく練習の途中だと捉えて、気長に向き合っていきましょう。


よくある質問

自分の意見を言うと、わがままだと思われないか不安です。

わがままは、相手の状況を考えずに自分の要求だけを通そうとする態度を指します。アサーションは、相手の状況や気持ちを踏まえたうえで自分の考えも伝える点が異なります。「一方的に押しつけていないか」を意識できていれば、わがままとは区別されます。

内向的な性格でもアサーションは身につけられますか?

性格の明るさや話しやすさとアサーションは別のスキルです。内向的な人でも、DESC法のように話す内容を事前に整理しておく方法を使えば、落ち着いて自分の気持ちを伝えられるようになります。

アサーティブに伝えたつもりが、相手を怒らせてしまいました。失敗でしょうか?

伝え方を工夫しても、相手の受け止め方までコントロールすることはできません。一度でうまくいかなくても、伝え方を振り返って次に活かせれば、それは練習の一環です。落ち込みすぎる必要はありません。

家族や先生が高圧的で、アサーションが通用しない気がします。どうすればよいですか?

立場や力関係が対等でない相手には、アサーションだけで状況を変えるのが難しい場合もあります。安全が心配なときや、繰り返し高圧的な扱いを受けているときは、無理に1人で対応しようとせず、他の大人やスクールカウンセラーなど、信頼できる第三者に相談することも選択肢に入れてください。


まとめ:アサーションは、自分も相手も大切にしながら関係を築く力

アサーションとは、相手の気持ちを尊重しながら、自分の意見や気持ちを率直に伝えるコミュニケーションの方法です。アグレッシブ・非主張的・アサーティブという3つのタイプを知り、DESC法やIメッセージといった具体的な方法を練習すれば、誰でも少しずつ身につけていけます。

友達との関係、部活動、家族とのやり取り——アサーションが使える場面は、日常のあちこちにあります。最初からうまく言えなくても構いません。小さな場面から練習を重ねていくことが、自分の気持ちを大切にしながら周りとの関係も築いていく力につながります。

自分の考えを言葉にして誰かに伝える経験をもっと積みたいと感じたら、同じように挑戦している全国の中高生とつながれるInvestureのコミュニティも覗いてみてください。学校では出会えないテーマに挑戦しながら、自分の言葉で発信する経験ができます。


監修:小牧健也(Investure編集長)

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