アントレプレナーシップ教育とは?意味とキャリア教育との違い、学校段階別の取り組み事例

キャリア教育

「探究の時間で起業家精神を育てると聞いたけれど、具体的に何をするのだろう」。そんな疑問を持つ保護者の方が増えています。文部科学省が力を入れている「アントレプレナーシップ教育」は、子どもに起業させるための教育ではありません。この記事では、その意味や注目される背景、キャリア教育との違い、学校段階別の取り組み事例までをまとめます。

この記事でわかること

  • アントレプレナーシップ教育の意味と、文部科学省が示す定義
  • なぜ今、学校教育の現場でこの教育が注目されているのか
  • キャリア教育とは何が違うのか
  • 子どもに具体的にどんな力が育つのか
  • 小学校・中学校・高校それぞれの取り組み事例
  • 家庭で今日からできること

  1. アントレプレナーシップ教育とは?意味と文部科学省の定義
    1. 「アントレプレナーシップ」の語源と意味
    2. 文部科学省が定義する「アントレプレナーシップ教育」
  2. なぜ今、アントレプレナーシップ教育が注目されているのか
    1. 変化の激しい社会で求められる力
    2. 日本の現状:大学進学後でもまだ少数派
  3. アントレプレナーシップ教育とキャリア教育の違い
    1. キャリア教育の目的とは
    2. 2つの教育が重なる部分と違う部分
  4. アントレプレナーシップ教育で育つ力
    1. 課題発見力・創造的思考力
    2. 実行力・協働する力:「醸成」から「発揮」へ
    3. リーダーシップとコミュニケーション力
  5. 学校段階別にみるアントレプレナーシップ教育の取り組み
    1. 小学校:身近な「会社ごっこ」から学ぶ
    2. 中学校:起業家との交流や地域連携
    3. 高校:「総合的な探究の時間」との連動
  6. 家庭でできる、アントレプレナーシップを育むヒント
    1. 日常の「なぜ?」を大切にする
    2. 挑戦を後押しする関わり方
    3. お小遣いやお手伝いを「小さな経営体験」に変える
    4. 「実践→振り返り」のサイクルを一緒につくる
  7. アントレプレナーシップ教育のよくある誤解・注意点
    1. 「うちの子を起業させる教育」ではない
    2. 単発のイベントで終わらせない継続性の重要さ
    3. 特別な才能がある子だけのものではない
  8. よくある質問
    1. アントレプレナーシップ教育はいつから始まった取り組みですか?
    2. 起業を目指していない子どもにも必要ですか?
    3. 小学生から始めても意味がありますか?
    4. 探究学習とアントレプレナーシップ教育は同じものですか?
    5. 家庭で一番手軽に始められることは何ですか?

アントレプレナーシップ教育とは?意味と文部科学省の定義

まずは言葉の意味と、国が示す定義を確認しましょう。「聞いたことはあるけれど、正確には説明できない」という保護者の方も多いはずです。

「アントレプレナーシップ」の語源と意味

アントレプレナーシップは、英語のentrepreneur(起業家)とship(資質・技能)を組み合わせた言葉です。日本語では「起業家精神」と訳されることが多いですが、意味は起業に限定されません。

新しい事業を生み出そうとする意欲や、リスクを恐れず挑む姿勢を指す言葉として紹介されることもあります。経営学者のピーター・ドラッカーは、変化の中に機会を見つけ、それを事業として成功させる一連の行動そのものだと捉えていました。この定義からもわかるように、アントレプレナーシップは知識というより、行動や姿勢に近い概念です。

出典:パーソルビジネスプロセスデザイン「アントレプレナーシップ教育とは?目的は?現状や導入のポイントを徹底解説」2025年6月

文部科学省が定義する「アントレプレナーシップ教育」

文部科学省は、アントレプレナーシップを「新たな価値を生み出していく精神」と位置づけています。そのうえで、自ら社会課題を見つけ、課題解決に挑戦し、他者と協働しながら解決策を探求する知識・能力・態度を身につける教育を、アントレプレナーシップ教育としています。

出典:科学技術振興機構「アントレプレナーシップ推進大使派遣支援の案内

つまり、起業そのものがゴールではありません。会社に所属して働く場合でも、地域活動に取り組む場合でも活きる、「自分から動く力」を育てる教育だと考えるとイメージしやすいでしょう。会社を新しく作る場面だけでなく、既存の組織の中で新しい価値を生み出す姿勢は「イントレプレナーシップ(企業内起業家精神)」と呼ばれ、アントレプレナーシップ教育が育てる力の延長線上にあります。

出典:Education Career「アントレプレナーシップ教育とは?概要や学習方法について解説」2025年2月

また、専門家の間でも「狭義」と「広義」の2つの捉え方があります。狭義では、実際に起業家を育成するための教育を指します。広義では、企業や行政、学校など組織の中で改革の担い手となる人を育てるための教育として、より幅広くとらえます。学校教育で扱われるアントレプレナーシップ教育の多くは、後者の広い意味で実践されています。

保護者の立場からすると、「起業」という言葉だけを見て身構えてしまうこともあるかもしれません。しかし実際に学校で行われているのは、身近な課題を見つけて、周りの人と一緒に解決策を考え、形にしてみるという体験です。この体験そのものが、進路や職業を問わず役立つ力になるという点を押さえておくと、子どもが持ち帰ってくる授業の話にも興味を持ちやすくなります。


なぜ今、アントレプレナーシップ教育が注目されているのか

学校現場でこの教育が広がっている背景には、社会の変化があります。

変化の激しい社会で求められる力

少子高齢化や産業構造の変化、AIやデジタル技術の進化により、「正解が決まった問題を解く力」だけでは通用しにくい場面が増えています。何が正解かわからない状況で、自ら課題を見つけ、周囲と力を合わせて解決策を試していく姿勢が、これまで以上に重視されるようになりました。

こうした流れを受け、高校では2022年度から「総合的な探究の時間」が必修化されました。この時間を通じて、アントレプレナーシップ教育に近い内容を実践する学校が増えています。単なる知識のインプットにとどまらず、自分で問いを立て、答えを探しながら形にしていく学び方が、教育現場全体で重視されるようになった結果ともいえるでしょう。

出典:パーソルビジネスプロセスデザイン「アントレプレナーシップ教育とは?目的は?現状や導入のポイントを徹底解説」2025年6月

さらに、テクノロジーの進化によって仕事の内容そのものが変わりつつあることも背景の一つです。機械やAIが定型的な業務を担うようになるほど、人にしか生み出せない発想や、新しい価値を提案する力の重要性が高まっていくと指摘されています。

出典:文部科学省「科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援 アントレプレナーシップ教育の現状について

日本の現状:大学進学後でもまだ少数派

意外に思われるかもしれませんが、日本ではアントレプレナーシップ教育を受けた経験を持つ人はまだ多くありません。2019年度末時点で、大学におけるアントレプレナーシップ教育の受講者は約3万人、大学生全体の約1%にとどまっていました。

出典:創業手帳「文部科学省|日本の課題を解決するために「アントレプレナーシップ教育」「大学発スタートアップ創出」を推進」2024年1月

令和4年度の調査でも、受講率は3.2%(約9万7千人)、実施している大学は全体の33%(289校)にとどまっています。国際的な調査でも、日本のアントレプレナーシップに関する評価は世界の中で高い位置にあるとはいえない状況が示されています。137か国を対象とした調査結果が紹介されるなど、国際比較の視点からも日本の課題が指摘されており、社会全体でアントレプレナーシップ教育の重要性への理解を広げていく必要があるとされています。

出典:教育新聞「アントレプレナーシップ教育とは?注目されている背景と現状、今後の取り組みを紹介

大学でもこの状況ですから、中学・高校段階での取り組みには地域や学校ごとの差がまだ大きいのが実情です。実施している大学の中でも、実践的な内容まで提供できているのはさらに一部にとどまり、予算やノウハウを持つ担当者が不足している学校も少なくありません。裏を返せば、家庭で日常的に触れる機会をつくることが、他の家庭との差につながりやすいタイミングだともいえます。


アントレプレナーシップ教育とキャリア教育の違い

似た言葉に「キャリア教育」があります。何が違うのか整理しておきましょう。

キャリア教育の目的とは

キャリア教育とは、一人ひとりの社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を育て、キャリア発達を促す教育を指します。職業調べや職場体験、進路ガイダンスなど、進路選択全般を幅広く扱う点が特徴です。多くの学校で、すでに中学・高校のカリキュラムに組み込まれています。

出典:板橋区「アントレプレナーシップ教育の視点を取り入れた授業改善

2つの教育が重なる部分と違う部分

アントレプレナーシップ教育で育つとされる「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」は、キャリア教育が目指す力と重なる部分が多くあります。実際、学校現場では既存のキャリア教育の単元を活かしながら、アントレプレナーシップ教育の視点を加える形で授業改善が行われています。ゼロから新しい授業を作るのではなく、今ある学びを工夫する発想です。

出典:板橋区「アントレプレナーシップ教育の視点を取り入れた授業改善

一方で、違いもあります。キャリア教育は「将来どんな職業・生き方を選ぶか」という進路選択全般を扱う、より広い枠組みです。対してアントレプレナーシップ教育は、社会課題を見つけて挑戦し、他者と協働しながら新しい価値を生み出すという、実践的な行動プロセスそのものに焦点を当てています。座学よりも、グループでの事業立案やプレゼンテーションなど、体験を通じて学ぶ形が中心になりやすい点も特徴です。

観点キャリア教育アントレプレナーシップ教育
主な目的社会的・職業的自立に向けた基盤づくり新たな価値を生み出す精神・行動の育成
扱う範囲進路選択・職業観全般課題発見から解決策の実行まで
学び方の特徴職業調べ、職場体験などグループワーク、事業立案など体験型が中心

出典:板橋区「アントレプレナーシップ教育の視点を取り入れた授業改善」/パーソルビジネスプロセスデザイン「キャリア教育(アントレプレナーシップ教育プログラム)」2025年7月

どちらか一方だけを行えばよいというものではなく、キャリア教育という土台の上に、アントレプレナーシップ教育という実践的な学びを重ねていくイメージで捉えると、学校での位置づけが理解しやすくなります。たとえば、キャリア教育の一環として行う職業調べの授業に、「調べた職業が抱えていそうな課題を1つ見つけ、自分なりの解決アイデアを考える」というひと工夫を加えるだけで、アントレプレナーシップ教育の視点を取り入れることができます。既存の学びを土台に、視点を少し広げるだけで実践できる点は、家庭での関わり方を考えるうえでも参考になります。


アントレプレナーシップ教育で育つ力

具体的にどんな力が育つのか、2つの段階に分けて見てみましょう。

課題発見力・創造的思考力

アントレプレナーシップ教育を実践してきた教育者からは、最終的な目標は「自己発見」「自己開発」であり、創造力やイニシアティブ、判断力、問題解決能力、チームワーク力を授業の中で使いながら培っていくものだという指摘があります。

出典:みんなの教育技術「「アントレプレナーシップ教育」とは?【知っておきたい教育用語】」2023年7月

こうした力の土台となるのが、チャレンジ精神や、やってみようという意欲、リスクを恐れない勇気といった「起業家マインド」です。経済産業省の調査報告でも、この起業家マインドを育む教育が、アントレプレナーシップ教育の柱の一つとされています。情報を集めて分析する力や、状況を見て判断する力も、この段階で少しずつ養われていきます。

出典:みんなの教育技術「「アントレプレナーシップ教育」とは?【知っておきたい教育用語】」2023年7月

具体的には、情報収集・分析力、判断力、実行力、リーダーシップ、コミュニケーション力といった資質・能力が育成の対象として挙げられています。これらは、経済産業省が提唱する「社会人基礎力」(前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力)とも重なる部分が多く、学校の学びが将来の仕事に直結していることを実感しやすい領域でもあります。

経済産業省の調査報告では、育成すべき起業家マインドとして、新たなことや目の前の課題に挑む「チャレンジ精神」、やる気や動機となる「志」、そしてリスクを恐れない勇気の3つが挙げられています。この3つは、いずれも生まれつきの才能というより、日々の経験の積み重ねによって少しずつ育っていく性質のものです。学校の授業だけでなく、家庭での小さな挑戦の積み重ねが、この土台づくりを後押しします。

実行力・協働する力:「醸成」から「発揮」へ

アントレプレナーシップ教育は「醸成」と「発揮」という2つの段階に分けて考えると理解しやすくなります。醸成のフェーズでは、ワークや演習を通じて創造力や行動力、共同力といった土台のマインドセットを育てます。自分の枠を超えて行動し、価値を生み出す機会をつかむための基礎づくりにあたる段階です。

出典:パーソルビジネスプロセスデザイン「アントレプレナーシップ教育とは?目的は?現状や導入のポイントを徹底解説」2025年6月

発揮のフェーズでは、実際に事業やプロジェクトを企画・実行しながら、専門的な知識や実践的な経験を積んでいきます。学校で言えば、探究学習で立てた仮説をもとに実際にアンケートを取ったり、地域の人に話を聞きに行ったりする活動がこれにあたります。単発の講義やイベントだけでは表面的な理解にとどまりやすく、実際の場面で使えるレベルまで育てるには、この2段階を繰り返しながら経験を積み重ねることが欠かせません。

リーダーシップとコミュニケーション力

アントレプレナーシップ教育の多くはチームでの活動を前提としています。1人で完結する作業ではなく、意見の異なるメンバーと役割を分担しながら、1つの成果に向けて進めていく経験が中心になるためです。この過程で、自分の考えを相手に伝える力や、相手の意見を受け止めたうえで折り合いをつける力が自然と鍛えられていきます。学校での成績にはあらわれにくい力ですが、社会に出たあとに必要とされる場面は多く、家庭でも「家族会議」のような形で意見を出し合う機会をつくることで、似た経験を積むことができます。


学校段階別にみるアントレプレナーシップ教育の取り組み

実際の学校では、どのような形で実践されているのでしょうか。段階別に紹介します。

小学校:身近な「会社ごっこ」から学ぶ

小学校では、既存の授業に「会社」の要素を取り入れる工夫が見られます。たとえばある小学校の6年生は、展覧会に向けていすを製作するグループ活動を、会社組織に見立てて実施しました。各グループが会社としてコンセプトを決め、完成したいすを保護者に向けてプレゼンテーションし、購入したいと思ってもらえるよう売り込みます。

出典:板橋区「アントレプレナーシップ教育の視点を取り入れた授業改善

活動の評価には、主体性や実行力を見る「アクション」、独創性や計画力を見る「シンキング」、発信力や規律性を見る「チームワーク」、表現力を見る「プレゼンテーション」という4つの観点が使われています。遊びの延長のように見えても、社会に出てから必要になる力を意識した、ねらいのある学びになっている点がポイントです。

中学校:起業家との交流や地域連携

中学校段階では、実際に起業を経験した人と交流する機会を設ける自治体もあります。東京都は「小中学生起業家教育プログラム」を実施し、起業家という存在を身近に感じてもらい、将来のキャリアの選択肢の一つとして意識できるようなワークショップを提供しています。

出典:キッザニア「【実践編】アントレプレナーシップ教育のヒント-今日からできる取り組み事例-」2025年9月

こうした取り組みは学校単位・自治体単位でも広がりを見せており、地域の企業や商店と連携し、実際の商品開発や販売の一部を体験する実践的なプログラムも増えています。文部科学大臣が任命する起業家などが「アントレプレナーシップ推進大使」として学校を訪れ、講演や授業に協力する取り組みも進んでいます。

出典:科学技術振興機構「アントレプレナーシップ推進大使派遣支援の案内

たとえば、キッザニアのような職業体験施設で行われるワークショップでは、実際に働いてお金を得るプロセスをミニチュアの街で体験しながら、企画や役割分担を子ども自身が考える場面が用意されています。教室を飛び出した体験は、中学生にとって「働く」という言葉のイメージを具体的にする効果があります。

出典:キッザニア「【実践編】アントレプレナーシップ教育のヒント-今日からできる取り組み事例-」2025年9月

高校:「総合的な探究の時間」との連動

高校では、2022年度から必修化された「総合的な探究の時間」を活用する形が主流です。生徒が自ら問いを立て、身近な気づきから社会課題を発見し、チームでプランを練って発表するというプロセスを、探究学習のカリキュラムに組み込む学校が増えています。「半径5メートルの身近な気づきから問いを立てる」というコンセプトは、進路がまだ定まっていない生徒にも取り組みやすいと評価されています。

出典:リクルート「学校事例紹介:総合的な探究の学びに、アントレプレナーシップ教育プログラム「高校生Ring」を取り入れて」2024年1月

最短8コマ(50分授業)程度で、アイデア出しからチーム編成、模擬的な会社設立までを体験できる教材も登場しており、進行の多くを動画に任せられる設計になっているものもあります。教員の負担を抑えながら、探究の授業に取り入れやすい形に整理されつつある点が特徴です。商業科など専門学科では、簿記や会計の学習と結びつけながら、より実務に近い形で取り組む学校もあります。

出典:StartupBase U18「高校むけ探究アントレプレナーシップ教材

商業高校など、地域との結びつきが強い学校では、地元の企業や商店会と連携しながら、学校の外に出て実践する機会も広がっています。学校の中だけで完結させず、実社会の人やリソースと接点を持つ「越境学習」の機会を増やすことが、生徒のアントレプレナーシップを高めるうえで効果的だとする研究報告もあります。

出典:日本情報経営学会誌「実践共同体概念に基づく高校生のアントレプレナーシップ開発メカニズム」2024年7月


家庭でできる、アントレプレナーシップを育むヒント

学校での取り組みを待つだけでなく、家庭でも意識できることがあります。

日常の「なぜ?」を大切にする

アントレプレナーシップ教育の第一歩は、課題を自分で見つけることです。家庭でも「なぜこうなっているんだろう」「もっとこうしたらいいのに」という子どもの気づきを、面倒くさがらずに拾ってあげましょう。答えをすぐに教えるのではなく、「どうしたら解決できそう?」と問い返すだけでも、課題発見の練習になります。

たとえば、中学2年生のBさんは、家族の夕食の準備を手伝う中で「毎回同じような献立になってしまう」という小さな不満に気づきました。保護者が「じゃあ、どうしたら変えられそう?」と問いかけたことをきっかけに、1週間分の献立を自分で考えて提案するようになったといいます。特別な教材がなくても、日常の会話の中に課題発見の種は転がっています。

挑戦を後押しする関わり方

アントレプレナーシップの核にあるのは、失敗を恐れず新しいことに挑む姿勢です。子どもが何かに挑戦しようとしたとき、結果よりも「やってみようとしたこと」自体を認める声かけが効果的です。うまくいかなかったときも、「次はどうする?」と一緒に考える姿勢が、挑戦を続ける力につながります。頭ごなしに否定せず、まずは最後までやらせてみる余白を持つことも大切です。

お小遣いやお手伝いを「小さな経営体験」に変える

お小遣い制やお手伝いの仕組みを、少しだけ工夫してみるのもおすすめです。たとえば「今月やることリストから自分で選んで実行する」「家族に必要とされていることを見つけて提案する」といったルールにするだけで、課題発見から実行までの一連の流れを、家庭内で小さく体験できます。学校の探究学習やアントレプレナーシップ教育で扱うテーマと、家庭での経験がつながると、子ども自身も「勉強していることが自分の生活に関係している」と実感しやすくなります。

年齢によって、家庭で意識したいポイントは少しずつ変わります。目安として次のように考えると、日々の関わり方を決めやすくなります。

学年の目安家庭で意識したいこと
小学生「なぜ?」を一緒に楽しむ、失敗しても責めない
中学生気づいたことを自分の言葉で提案させる
高校生挑戦の計画から振り返りまで、なるべく本人に任せる

出典:板橋区「アントレプレナーシップ教育の視点を取り入れた授業改善」/パーソルビジネスプロセスデザイン「アントレプレナーシップ教育とは?目的は?現状や導入のポイントを徹底解説」2025年6月

高校生になるにつれて、保護者が手を出す場面は少しずつ減らしていくことが望ましいとされています。低学年のうちは一緒に考える時間を大切にし、学年が上がるにつれて「見守る」比重を増やしていくイメージを持っておくと、関わり方に迷ったときの目安になります。

「実践→振り返り」のサイクルを一緒につくる

アントレプレナーシップ教育で重視される「醸成→発揮」の流れは、家庭でも応用できます。何かに挑戦したあとに、「うまくいったこと」「うまくいかなかったこと」「次に試したいこと」を短く振り返る時間を、週末の会話などに取り入れてみましょう。うまくいかなかった部分を責めるのではなく、次への材料として一緒に扱うことがポイントです。特別な時間を新たに設けなくても、夕食時の会話に1つ質問を足すだけで始められます。


アントレプレナーシップ教育のよくある誤解・注意点

最後に、保護者の方が誤解しやすいポイントを確認しておきましょう。

「うちの子を起業させる教育」ではない

アントレプレナーシップ教育と聞くと、「将来起業させるための教育」と身構えてしまう保護者も少なくありません。しかし、これは単なる起業家育成のためのビジネス教育ではなく、社会課題を自ら発見し、解決に向けて挑戦する知識・能力・態度を身につける教育です。グループワークを通じて、他者と協働しながら解決策を探求する力も同時に養われます。将来会社員として働く場合でも、地域活動に関わる場合でも活きる力を育てるものだと理解しておくと安心です。

出典:教育新聞「アントレプレナーシップ教育とは?注目されている背景と現状、今後の取り組みを紹介

単発のイベントで終わらせない継続性の重要さ

もう一つ注意したいのが、1回のワークショップやイベントだけで力が身につくわけではないという点です。単発の講義やワークショップでは表面的な理解にとどまりやすく、実際の場面で活用できるレベルまで到達するのは難しいとされています。継続的な学習を通じて、段階的にスキルとマインドセットを育てていくことが前提とされている点を、保護者としても知っておきたいところです。学校の取り組みだけに頼らず、家庭でも日常的に小さな挑戦の機会をつくることが、力を定着させる近道になります。

出典:パーソルビジネスプロセスデザイン「アントレプレナーシップ教育とは?目的は?現状や導入のポイントを徹底解説」2025年6月

特別な才能がある子だけのものではない

「うちの子は積極的なタイプではないから」と、アントレプレナーシップ教育を遠ざけてしまう保護者もいますが、これも誤解の一つです。育成の対象となる力は、生まれ持った性格ではなく、繰り返しの実践と経験を通じて少しずつ身につけていくものだとされています。控えめな性格の子どもでも、身近な課題に気づく力や、じっくり考え抜く力を伸ばしていくことは十分に可能です。積極性の有無ではなく、小さな一歩を後押しする周囲の関わり方のほうが、力の伸び方に影響すると考えておくとよいでしょう。


よくある質問

アントレプレナーシップ教育はいつから始まった取り組みですか?

起業家教育という言葉自体は2000年代頃から注目され始めました。学校教育の中で本格的に広がったのは近年で、高校では2022年度の「総合的な探究の時間」必修化を機に、実践する学校が増えています。

起業を目指していない子どもにも必要ですか?

はい。アントレプレナーシップ教育が育てるのは、課題発見力や実行力、協働する力など、どんな進路に進んでも役立つ汎用的な力です。会社員として働く場合や、組織の中で新しい取り組みを提案する場合にも活きます。

小学生から始めても意味がありますか?

意味があります。小学校でも「会社ごっこ」のような形で、身近なテーマから課題発見や協働を体験する実践が行われています。年齢に応じた小さな成功体験の積み重ねが、その後の学びの土台になります。

探究学習とアントレプレナーシップ教育は同じものですか?

完全に同じではありませんが、重なる部分は大きいです。多くの高校では「総合的な探究の時間」の枠組みを使って、アントレプレナーシップ教育の要素を取り入れています。

家庭で一番手軽に始められることは何ですか?

子どもが日常で感じた「なぜ?」「こうしたらいいのに」という気づきを、そのままにせず一緒に考える習慣づくりです。特別な教材がなくても、今日から始められます。


アントレプレナーシップ教育は、学校だけで完結するものではなく、家庭での日々の関わり方によっても育ち方が変わってきます。Investureでは、学校の学びと社会のつながりを可視化する記事を発信しています。他の記事もあわせてチェックしてみてください。最新情報はSNSでも発信していますので、ぜひフォローしてお役立てください。

監修:小牧健也(Investure編集長)

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