「うちの子、授業についていけていないかも」「逆に、簡単すぎて退屈そう」。そんな思いを抱えたことはありませんか。
クラス全員が同じスピードで学ぶ一斉授業では、「速すぎる子」と「遅れがちな子」が必ず生まれます。この課題に対し、いま注目を集めているのが「自由進度学習」です。さらにAI教材の進化により、一人ひとりの理解度に合った学びが、学校だけでなく家庭でも実現しやすくなっています。
本記事では、自由進度学習の基本からAI教材の活用事例、そして家庭学習への応用まで、保護者が知っておきたいポイントを解説します。
自由進度学習とは? 一斉授業との違いを理解する
自由進度学習の定義と基本的な仕組み
自由進度学習とは、子ども一人ひとりが自分のペースで学習を進める方法です。学ぶ内容や単元は共通でも、取り組む順番や進み方は子どもによって異なります。プリントやタブレット教材を使い、自分で課題に取り組む場面が多いのが特徴です。
従来の一斉授業では、理解が早い子は待ち時間が長くなり、時間がかかる子は消化不良のまま次へ進んでしまいがちでした。自由進度学習では、この「進度のミスマッチ」を解消できます。
出典:すらら「自由進度学習とは?メリット・デメリットや具体的なやり方と実践事例」2024年8月
「個別最適な学び」と自由進度学習の関係
自由進度学習が注目される背景には、文部科学省が提唱する「個別最適な学び」があります。2021年の中央教育審議会答申では、子ども一人ひとりの特性や学習進度に応じた「指導の個別化」と「学習の個性化」の重要性が示されました。
自由進度学習は、この「個別最適な学び」と「協働的な学び」の両方を実現できる学習形態です。個別に進めるだけでなく、グループワークや友達との学び合いを組み込むこともできます。
出典:文部科学省「育成を目指す資質・能力と個別最適な学び・協働的な学び」
さらに、GIGAスクール構想による1人1台端末の整備も追い風です。2025年度にはGIGA第2期として端末更新がピークを迎え、2026年度からは新環境での本格運用が始まっています。ICT環境が整ったことで、AIドリルを使った習熟度別の学びが全国の教室で可能になりました。
出典:MM総研「GIGAスクール端末更新でOSシェアに大きな変化」2025年
自由進度学習のメリット・デメリット
保護者が知っておきたい5つのメリット
自由進度学習には、一斉授業にはない次のような利点があります。
- 理解度に合った学習ができる: 基礎が不安な子は基本を繰り返し、得意な子は応用に挑戦できます
- 自己調整力が育つ: 「どの順番で学ぶか」を自分で決める経験を通じて、学習を自分で管理する力が身につきます
- 主体性とモチベーションが高まる: 自分で計画を立てて実行するため、学びへの意欲が向上します
- 協働的な学びにもつながる: 友達同士で教え合う場面が生まれ、「教えることで理解が深まる」効果も期待できます
- 自己肯定感が向上する: 自分のペースで「できた」を積み重ねる体験が、自信につながります
出典:プログラミングクラウド「自由進度学習とは?小学校でのやり方やメリット・デメリット、実例を解説」2026年1月
注意すべきデメリットと対策
一方で課題もあります。保護者として押さえておきたいポイントを整理しました。
| デメリット | 対策のヒント |
|---|---|
| 好きな教科ばかり進め、苦手を避けてしまう | 学習記録を定期的に確認し、バランスをチェックする |
| 計画を立てること自体に慣れていない子は戸惑う | 最初は保護者が一緒に計画表を作り、徐々に手を離す |
| 学校全体のICT環境整備や教員間連携が求められる | 学校の取り組み方針を保護者会などで確認する |
出典:学研教室「子どもが主体的に取り組む『自由進度学習』とは?」
AI教材が自由進度学習を変える ― アダプティブラーニングの仕組み
アダプティブラーニングとは
AI教材の核となる技術が「アダプティブラーニング(適応学習)」です。AIが学習者の解答履歴や理解度を分析し、一人ひとりに最適な問題を自動で出題します。
従来のドリルでは全員が同じ問題セットを解いていましたが、アダプティブラーニングでは30人いれば30通りの学習経路が生まれます。これが自由進度学習と相性が良い理由です。
出典:renue「AI教育・EdTechとは?アダプティブラーニング・個別最適化学習のAI活用を解説【2026年版】」2026年4月
AI教材が提供する3つの機能
AI教材には、自由進度学習を支える3つの主要機能があります。
つまずき診断機能: 間違えた問題の原因をAIが分析し、理解が不足している単元を特定します。過去の学年に遡って「理解の穴」を見つけ、そこから学び直す経路を自動で組み立てるサービスもあります。
難易度コントロール機能: 理解度に応じて出題の難易度が自動で変わります。簡単すぎて退屈になることも、難しすぎてやる気をなくすこともありません。
学習データの可視化機能: 学習時間、正答率、苦手単元などがレポートとして表示されます。保護者が「何をどこまで理解しているか」を把握でき、家庭でのサポートに活かせます。
学校現場で使われるAI教材 ― 主要3サービスの特徴
すらら・すららドリル ― つまずきに遡る無学年式AI教材
すららネットが提供するすらら・すららドリルは、小学校から高校までの5教科に対応したAI学習教材です。特許を取得した「つまずき診断」機能が最大の特徴で、間違えた問題から既習範囲のつまずき箇所をピンポイントで判定します。無学年式のため、学年をまたいだ先取りや遡り学習が可能です。
広島県の公立小学校では、教員が学習計画表のベースを作成し、子どもたちがそれをもとに自分のペースで学習を進める実践が行われています。タブレットの自動採点機能で進捗をリアルタイムに把握し、教員が個別支援に活かす仕組みです。
出典:すらら「すららドリル」公式サイト
出典:経済産業省「未来の教室」すらら紹介ページ
Qubena(キュビナ) ― 教科書準拠のAI型教材
COMPASS社のQubenaは、文部科学省の検定教科書と連動した教材です。全国170以上の自治体、2,300以上の学校で採用されています。東大阪市教育委員会と慶應義塾大学中室研究室の共同効果検証では、利用した児童に学力向上と主体的な学習態度が確認されました。
出典:ICT教育ニュース「Qubena導入効果発表/東大阪市教育委員会」
atama+(アタマプラス) ― 根本原因に遡るAI学習
atama+は全国4,000以上の教室で導入されているAI教材です。「なぜ苦手なのか」という根本原因まで遡る学習経路設計が特徴で、中学2年の連立方程式が解けない生徒に対し、小学6年の比例まで遡って理解の穴を埋めるといった学習パスを自動構築します。2024年には生成AIを活用した「AIステップ解説」機能も搭載されました。
出典:atama plus公式サイト「atama+塾のフランチャイズ展開を開始」2025年2月
主要AI教材の比較表
| 項目 | すらら・すららドリル | Qubena | atama+ |
|---|---|---|---|
| 対象学年 | 小学校〜高校 | 小学校〜中学校 | 小学校〜高校・既卒 |
| 対応教科 | 5教科 | 5教科 | 小3教科〜高6教科8科目 |
| 特徴的な機能 | つまずき診断、難易度コントロール | 教科書準拠、復習問題配信 | 根本原因への遡行学習、AIステップ解説 |
| 主な利用形態 | 学校・家庭 | 学校(公立中心) | 塾・予備校 |
家庭学習で自由進度学習を実践する方法
AI教材を活用した3ステップ
学校で自由進度学習を導入していなくても、家庭にそのエッセンスを取り入れることは可能です。
ステップ1:学習計画を子どもと一緒に立てる。 1週間分のシンプルな目標を、子ども自身が「自分で決めた」と感じられる形で設定します。
ステップ2:AI教材で「自分に合った問題」に取り組む。 アダプティブラーニング教材を使えば、理解度に応じた出題が自動で行われます。
ステップ3:振り返りの時間をつくる。 「今日は何ができるようになった?」と短い振り返りを設けます。AI教材の学習レポートを一緒に見ると、具体的な会話がしやすくなります。
出典:ベネッセ「自由進度学習とは? 一斉授業からの変化で学びはどう変わる?」
保護者は「教える人」より「伴走する人」
保護者に求められるのは、「教える」役割ではなく「伴走する」役割です。意識したいポイントは3つあります。
「勉強しなさい」ではなく環境を整えること。学習に集中できるスペースの確保やWi-Fi環境の整備など、学べる土台づくりが効果的です。次に、成果ではなくプロセスを認めること。「計画通りに取り組めたね」と学び方そのものを認める声かけが、主体性を育てます。そして、つまずいたときは一緒に考えること。AI教材のデータを見ながら「どうやったら分かるようになるかな?」と問いかけることで、子ども自身が考える力が伸びていきます。
自由進度学習×AIの課題と今後の展望
デジタル教育格差と保護者にできること
AI教材の普及に伴い、家庭のデジタル環境の差が教育格差につながる懸念もあります。GIGAスクール構想で学校の端末整備は進んでいますが、家庭のネットワーク環境は各家庭に委ねられている状況です。自治体によっては端末の持ち帰り推進やWi-Fiルーターの貸し出しを行っているところもあるため、お住まいの地域の支援制度を確認しておきましょう。
AIに任せきりにしない「深い学び」の大切さ
AI教材は知識定着の効率化に優れたツールですが、「なぜ学ぶのか」という動機づけや、知識を実生活で活かす応用力は、AIだけでは育ちにくい領域です。AI教材で基礎力を効率的に固めつつ、対話や実体験を通じた深い学びを家庭でも意識していくことが大切です。
今後の進化 ― 生成AIとCBTの広がり
2027年度からは全国学力・学習状況調査がCBT(コンピューターベースのテスト)に全面移行する方針です。学習と評価の両方がデジタル化されることで、AI教材の活用範囲はさらに広がるでしょう。生成AIを活用した対話型解説機能も各社で導入が進んでおり、「問題を出す」だけでなく「分かるまで教える」AI教材への進化が期待されます。
出典:教育ICT総合サイト「GIGA第2期の学習者用端末はChromeOSシェアが6割に」2025年12月
よくある質問(FAQ)
Q1. 自由進度学習は何年生から始められますか?
小学校低学年から導入している学校もあります。最初は教員が学習計画のベースを作り、その中から学ぶ順番や方法を選ぶところから始めるのが一般的です。家庭学習でも、低学年のうちは保護者と一緒に計画を立てることで無理なくスタートできます。
Q2. AI教材を使えば塾は不要になりますか?
AI教材は効率的な知識定着に強みがありますが、塾の役割をすべて代替するわけではありません。学習習慣の定着支援や志望校対策など、人による指導が効果的な場面もあります。お子さんに合った組み合わせを検討することが大切です。
Q3. 「遊んでしまうのでは?」という心配がありますが大丈夫ですか?
自由進度学習は「何をやってもいい」のではなく、「決められた範囲の中で自分のやり方で学ぶ」方法です。AI教材を使えば学習データが記録されるため、実際にどれだけ取り組んだかを保護者が確認できます。
Q4. 学校でAI教材を使っていない場合、家庭で始めるにはどうすればよいですか?
すらら、atama+オンライン塾など、家庭から直接利用できるサービスが増えています。まずは各教材の無料体験を試し、1〜2週間ほどお子さんに合うかどうかを見極めるのがおすすめです。
まとめ
自由進度学習は、子ども一人ひとりの理解度やペースに合わせた学びを実現する方法です。文部科学省が推進する「個別最適な学び」の理念と合致し、GIGAスクール構想による端末普及が追い風となって、全国の学校で導入が広がっています。
この流れを技術面で強力に支えているのがAI教材です。すららドリルの「つまずき診断」、Qubenaの教科書準拠型AI学習、atama+の根本原因への遡行学習など、各サービスがそれぞれの強みを活かしています。
学校の導入を待つだけでなく、家庭学習にも自由進度学習の考え方を取り入れることは十分に可能です。AI教材を活用しながら、子どもと一緒に計画を立て、振り返りの時間をつくる。保護者が「伴走する人」として関わることで、お子さんの学ぶ力は着実に育っていきます。
「自分のペースで、自分の力で学ぶ」経験は、教科の勉強にとどまらず、将来の仕事や人生においても大きな財産になるはずです。


